現役編集者の書評ブログ

ビジネス書の編集をしています。読んだ本を不定期で紹介します。

【書評】『本日は大安なり』辻村深月

65点の「ハッピーエンド」

ラストをはっきり描かない小説や映画が発表されると、必ず巻き起こるのが、「ハッピーエンド」「バッドエンド」論争だ。

主人子は家族と再会して幸せに暮らしたはず。いやいや、失意の中死んでいったに違いない……など、話は平行線のまま、また新たな作品の論争へと移っていく。

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【書評】『なぜアマゾンは1円で本が売れるのか 』武田徹

 出版界のこれまで、これから

もう何年続くんだよ……と思っている人も少なからずいるかもしれないが、出版業界が「過渡期」だといわれるようになって久しい。

電子書籍による「黒船来襲」から今まで続く、長い時代の移行期間だけれど、ここ最近、ほんとにいろんなことが変わり始めている。

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【書評】『限りなく透明に近いブルー』村上龍

小説に“飲み込まれる”

いろんな人の小説の感想を見ていると「自分の知らない新しい世界に触れられた」といった表現によく出くわす。

確かに、自分とは全く違う世界をのぞき見ることができるのは小説の大きな醍醐味の一つだと思う。

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【書評】『ようこそわが家へ』池井戸潤

「型にはまる」って意外と大事?

最近のビジネス書には「型にはまるな!」「没個性になるな!」とよく書かれている。これからは会社の歯車になるような人間に勝ち目はないから自分の強みを見つけて磨きなさい! という主張だ。

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【書評】『個人的な体験』大江健三郎

表現の「自主規制」

「最近のテレビはつまらない!」といった声をよく聞く。

予算が厳しいとか、優秀な制作者が集まらないなど、いろいろな理由が指摘されているけれど、その中でも最もよく言われているのが、制作サイドの「自主規制が行き過ぎている」ことだ。

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【書評】『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』井川意高

「ギャンブル」と「依存」

ギャンブル依存症」という言葉を今年になってよく聞くようになった。
カジノ法案が成立したことで、ギャンブルで身を滅ぼす人が増加してしまうのではないかとマスコミが盛んに騒ぎ立てているからだ。

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【書評】『星間商事株式会社社史編纂室』三浦しをん

「時間」と「読書」

最近は本を読むのは、もっぱら通勤中の電車の中だ。

朝、外が少しずつ明るくなっていくのを感じながら読む1時間と、夜、仕事終わりでほっとしながら読む1時間が、僕の読書時間の中心となっている。

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