現役編集者の書評ブログ

ビジネス書の編集をしています。読んだ本を不定期で紹介します。

【読書メモ】『パリのすてきなおじさん』金井真紀

『パリのすてきなおじさん』

書名:パリのすてきなおじさん     

著者:金井真紀  監修:広岡 裕児

出版社:柏書房 (2017/10/24)

ISBN:9784760149117

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【内容】

難民問題、テロ事件、差別の歴史……。 世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。 だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。 軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集 中島京子さん推薦! 「パリは人種のるつぼ、おじさんのサラダボウルだ。 読めば21世紀の隣人の姿が浮かび上がり、 クスクスも赤ワインも、より味わい深くなる。」

Amazon「内容紹介」より)  

    

 

【感想】

書店にはたくさんの「名言集」が並んでいる。芸能人、文化人、スポーツ選手……。特別な人から発せられる特別な言葉から、僕たちは人生のヒントを学び取ろうとしている。

でも、言葉って何も有名人のものだけじゃない。確かに普通の人はそんなにたくさんの素晴らしい言葉は言えないかもしれないけれど、それでも1つの考え方・1つの言葉ぐらいだったら、人に伝えられるものを持っているはずなんだと思う。

『パリの素敵なおじさん』の著者金井真紀さんはそこに目をつけた。この本では、パリの街角で働くおじさんたちに直撃インタビュー敢行し、その様子を文章とイラストでまとめている。

インタビュー対象はどこの街にでもいるような普通のおじさんたちが中心だ。なのに、どのおじさんからもはっとするような言葉が飛び出す。よりよい生き方を追求しなさいと叫ぶ数多の自己啓発書よりも、パリのおじさんののびのびとした生き方・考え方のほうが学ぶべきところは大きいかもしれない。

おじさんの話はときに歴史のこと、テロのこと、難民のことなどにも及び、パリにはびこる社会問題も見え隠れする。パリで起こっている様々な問題について、当事者がどう考え、どう行動しているのかというのはすごく貴重な情報だと思う。
単にパリのおしゃれエッセイだと思って手に取った人はこの本の懐の深さにいい意味で裏切られるだろう。周りに日本の素敵なおじさんがいなくて、人生の先輩になるような存在が欲しいという人はこの本を読んで、お気に入りのおじさんを見つけてほしい。

また、この本には面白いしかけがある。帯が全部で4パターンあって、それぞれ違うおじさんのイラストと言葉が載っているのだ。おじさん集めという本の特色をよく表しているすばらしい仕掛けだと思う。編集者にも拍手を送りたい。

僕の買った本には、老舗クスクス屋の店主をしているおじさんが載っている。

そのおじさんの言葉は、

 

ほとんどの問題は、他者を尊重しないから起こる。

 

上司から言われた箴言はなかなか心にまで届かない。でもおじさんの言葉にはなぜか素直にうなずくことができる。

僕はAmazonで買ったので、帯は選べなかった(「パリのおじさんくじ」と呼ぼう)けれど、この本を買う際はぜひ書店に足を運んで、ビビッときたおじさんの帯を選んでみてほしい。

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