【書評】『最強の働き方』ムーギー・キム
僕の職場に足りないもの
あなたの職場に足りないものは何だろうか?
休日、福利厚生、ボーナス……はたまた人間関係?
僕の職場に足りないものは、「気軽に相談できるちょっと年上の先輩」だ。
出版社のあるあるネタかもしれないが、新卒をあまり取らず、人材のほとんどを中途採用でまかなうので、30代の社員がほとんどいないという状況になってしまう。
つまり、何か困ったことがあったときに相談するのは、「何でも簡単に解決してしまうすごく年上の先輩」なのだ。
この人たちは、ものすごく頼りになるのだけれど、頼りになりすぎてしまい、僕の相談に乗って、「こうしたらいい」とアドバイスするというより、持ち前の剛腕と百戦錬磨の経験でたちどころに問題を解消させてしまう。
その間、僕は後ろでその手際を感心してみているだけなので、問題解決能力がなかなか身についていかないような気がする。
なんでも相談に乗ってくれて、時にはユーモアも交えながらアドバイスをくれる、そんな少し年長の先輩がいたらいいなあ……とずっと思っている。
『最強の働き方』
書名:最強の働き方;世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓
著者:ムーギー・キム
出版社:東洋経済新報社 (2016/7/29)
ISBN: 9784492045930
本書は7月に刊行して以来、非常によく売れていて(25万部突破!)、どんな書店さんでも平積みになっているので、見かけたことのある人も多いかもしれない。
世界中の一流ビジネスパーソンと仕事をしている「グローバル・エリート」こと、ムーギー・キム氏によるビジネスの考え方・スキルに関するエッセイである。
「グローバルエリート」の書いた本ということで、ハードルが高いと感じる人も多いかもしれないが、決してそんなことはなく、コミカルなイラストも入っているし、文章はユーモアも交えてあって非常に読みやすい。
内容も、「マッキンゼー」や「MBA」など目線の高い内容ではなく、
(著者はそういった上から目線の本を嫌っていて、そうならないように細心の注意を払って執筆したようだ)
メールの書き方、時間管理の考え方など、とにかく仕事についての基本が、筆者と出会ってきた人たちのエピソードとともに語られている。
それはまるで、ちょっと年上の先輩から、「そういえばこんな人がいてね……」と、アドバイスをもらっているかのようだ。
明日にでも仕事に生かせそうな実践的なアドバイスが、筆者の国際的なビジネスの経験をもとに語られているのだから、なるほど、多くのビジネスマンが手に取る本となっているのもうなずける。
僕自身も、この本を読んで、ずっと求め続けていた「気軽に相談できるちょっと年上の先輩」を見つけたように感じられた。
勝手に先輩と慕われても、著者は困ってしまうかもしれないが、僕のように、相談できる人がいなくて悩んでいる若手のビジネスマンは、ゆっくりお酒でもかたむけながら、この本と「対話」してみてはどうだろうか。