【書評】『いまさら翼といわれても』米澤穂信
学生時代の「小さな痛み」
学生時代というのは、後悔を積み重ねる時期なのかもしれない。
トラウマなんていう大げさなものではないけれど、今でもふとしたきっかけで思い出して、小さな痛みを感じることがある。
続きを読む【書評】『悟浄出立』万城目学
「主役」と「脇役」
「あなたの人生の主役はあなた自身だ」
相手を鼓舞させるための使い古されたフレーズだけれど、いまだに使い続けられているのは、自分が「脇役」的な人生を歩んでいると考えている人が多いからだろう。
どうして僕らはいつまで経っても「主役」になれないのだろうか?
続きを読む【書評】『夜を乗り越える』又吉直樹
なぜ、本を読むのか?
僕がこの問いに明確に答えられるようになったのは、就職活動がきっかけだったように思う。
当時は面接で話すネタ作りのために、書店に通ったり漫画喫茶に籠ったりして、本や漫画をたくさん読んでいたのだが、正直毎日がかなり辛かった。
大好きな作家、大好きな漫画家の作品も全然頭に入ってこないし、つまらないし、日常の一部だった読書がこれほど苦痛なものになってしまっていることに戸惑っていた。
続きを読む【書評】『熱狂宣言』小松成美
「熱さ」へのあこがれ
僕らの世代では「熱い」という形容詞はよくない意味で使われることの方が多い。
「○○くん、熱いよね」は、「ちょっと近寄りがたいよね……」というニュアンスを含んでいる。
「さとり世代」(死語?)なんて言葉でくくられることもある僕らは、自分や周りにあまり期待しすぎないこと、頑張り過ぎないこと、とにかくどこか冷めた感じであることが、同年代のコミュニティでうまくやっていく条件なのだと思う。
続きを読む【書評】『沈みゆく大国アメリカ』堤未果
想像力のなさ
忘れられない後悔がある。
中学の頃からずっと仲の良かった友達がいた。高校も大学も別々だったけれど、事あるごとに彼の家に遊びに行って、ゲームをしたり、漫画を読んだり、くだらないことをして過ごしていた。
俺ら一生友達だよな! なんて約束を交わしたわけではなかったけれど、これからずっとこの距離感で付き合っていけるだろうと思っていた。
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