現役編集者の書評ブログ

ビジネス書の編集をしています。読んだ本を不定期で紹介します。

「漫画村」に対していまできること、今後すべきこと

漫画村」が世間を騒がしている。ついに出版社や漫画家も違法で漫画が掲載されているウェブサイトを閲覧しないでほしいという声をあげ始めている。

ただ、個人的には、今回のように消費者に求めるというやり方ではなかなか効果は上がらないだろうなと思う。自分が学生だったときのことを思い返して欲しい。数百円数千円の小遣いを必死にやりくりしていた当時に、漫画村のようなサイトがあったとしたら、あなたは手を出さずにはいられるだろうか。ほとんどの人は誘惑に負けてしまうのではないかと思う。

お金に余裕のある大人たちが無料だからといって「漫画村」に手を出すのはさすがに常識がなさすぎる。しかし、子供たちに対して、無料で漫画を読むことが業界全体の衰退につながっていくということを理解させるのは至難の業だ。それに、「漫画村」という問題が発生したから、急いでコンテンツビジネスに対する教育を行うというのも、順序が逆というか、どこかいびつに感じられる

やっぱりこういう問題に対しては消費者側の意識を変えるよりもまずコンテンツを提供する側がしっかりとした対策を打ち出していくことが大事なんだと思う。

僕が思うにその対策と言うのは大きく分けて2つある。

①「漫画村」を閉鎖させる

漫画村より魅力的なサービスを提供する

①は言わずもがなだと思う。もともと「漫画村」なんてなければこんな社会問題にまで発展することもなかった。

②に関しては、何も出版社がすべてのコンテンツを無料で提供しなければならないということではない。消費者に判断を委ねて、わざわざ違法サイトなんて使わずに公式のものを使った方がいいと思わせるようなものを提供すればいいということだ。

多くの「漫画村」ユーザーは、サイトを利用することに罪悪感を覚えたり、得体の知れない怖さを感じていたりするはずだ。その罪悪感や恐怖感を逆手にとり、出版社側が新たな優良サービスを提供できれば、漫画村を閉鎖させずとも閲覧する人は減っていくだろう。

ただ、残念なことに現状ではそのようなサービスがない。だからこそここまで「漫画村」は幅をきかせてしまっている。講談社が発表した月額700円で複数の漫画雑誌が読み放題になるサービス「コミックDAYS」はこれまでの漫画業界から見るとかなり画期的だが、中学生高校生の子供たちにつき700円というのはかなり厳しいのではないかと思う。これぐらいの条件だとやはり漫画村から引きはがすことはできないだろう。

業界が維持できない程のサービスを提供するわけにはいかないから、出版社側としてはこれが限度なのかもしれない。ただ、「漫画村」を閉鎖させるのが難しいのであれば、複数の出版社が協力して、価格を抑えた読み放題サービスを始めるぐらいしか方策はないように思う。

今後の流れとして一番まずいのは、今の子供たちがコンテンツは無料で受けとるものでお金を払う必要は無いという意識を持ってしまうことだ。そうなってしまったら、彼らが大人になったとき、出版界だけではなく様々な業界が大打撃を受ける。

まずは出版界でしっかりとした対策を取って、そのあとにコンテンツビジネスへの理解を促す教育をする。そうした短期的、長期的両面で対応していくというのが真の「漫画村」対策なのだと思う。

 

長々と書きましたが、要は「いまが出版社の踏ん張りどころ」ってことと、「金を持っているくせに、漫画村に手を出す想像力の著しく欠如した大人は救いようがない」ってことです。