現役編集者の書評ブログ

ビジネス書の編集をしています。読んだ本を不定期で紹介します。

【読書メモ】『日本再興戦略』落合陽一

『日本再興戦略』

書名:日本再興戦略     

著者:落合陽一

出版社:幻冬舎 (2018/1/31)

ISBN:9784344032170

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【内容】

情熱大陸」出演で大反響! 落合陽一の最新作!

 

【本書概要】
AI、ブロックチェーンなどテクノロジーの進化、少子高齢化、人口減少などにより、世界と日本が大きく変わりつつある。
今後、世界の中で日本が再興するにはどんな戦略が必要なのか。
テクノロジー、政治、経済、外交、教育、リーダーなどの切り口から日本と日本人のグランドデザインを描く。


「日本再興戦略」とは、改革や革命ではなく、アップデートです。
必要なことは、「過去において日本は何が機能したのか、何が時代と合わなくなったのか」を検証すること。
本書がポジションを取って未来を作る皆さんの一助となることを祈っています。
(著者より)

Amazon「内容紹介」より)  

    

 

【感想】

今最も注目される日本人科学者の一人、落合陽一が自らの描く日本の未来予想図について語る。

新興ではなく再興というところがポイント。落合氏によると、明治維新以前の日本には、これからの未来を希望に満ちたものにするためのヒントが詰まっているという。これは最近のテレビでよく見る、作り物感満載の「ひたすら日本万世」の番組とは違う。徹底的な分析に基づく「日本再興戦略」は、私たち日本人を真正面から勇気づけてくれる。

例えば、日本は古来から平等であることよりも公平であることを重んじていた。落合氏はこの事実を、次世代通信システム5Gの普及と結びつける。

公平であることを重んじる日本人は自分たちの住んでいるところがどんなに田舎であろうと、5Gがつながることを強く求める。それが5Gの急速な普及につながっていくのあだという。

日本人の源流を流れる思想と科学技術の発展とを結びつける考え方は非常に面白い。おそらくそれができるのは今日本で落合氏くらいしかいないだろう。そういう意味で、この本は類書の存在しない唯一無二の1冊だといっていい。

なかには、身分制度に対する言及など、少しひやっとする記述もあるが、じっくり読んでみると、差別的意識とは無縁な落合氏の「戦略」が見えてくる。読者には、こういった記述も表面的に捉えることなく、著者からのメッセージを正しく受け取ってほしいと思う。

全体を通して示唆に富んだ素晴らしい本だったが、一点だけ気になったことがある。図版、もう少しどうにかならないか。『お金2.0』の時も思ったが、時代の最先端を行く一流の著者が、自分の全てをぶつけて書いた一冊に、フリーのイラストを使った図版はそぐわないように感じる。特に本書は、著者が提供したであろうデザイン性の高いイメージ図も同時に載せられていて、そのクオリティーの差が非常に気になる。

ひと月一冊という編集ペースでは図版の作り込みまで手が回らない部分もあるのかもしれない。ただ、かなりの売り上げが見込める本なのだから、実力のあるデザイナーに外注をするなどして、そういった部分も作り込んでいけばいいのになぁと思う。

ただここまで何度も書いているように、内容の面白さ・斬新さは疑いようがない。これから日本の最前線で活躍するであろう著者が一般の人でも理解できるように自らの思考を開陳してくれた貴重な一冊なので、ぜひ手に取ってみてほしい。

 

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