【読書メモ】『いつも彼らはどこかに』小川洋子
『いつも彼らはどこかに』
書名:いつも彼らはどこかに
著者:小川洋子
出版社:新潮社 (2015/12/23)
ISBN:9784101215273
【内容】
たっぷりとたてがみをたたえ、じっとディープインパクトに寄り添う帯同馬のように。深い森の中、小さな歯で大木と格闘するビーバーのように。絶滅させられた今も、村のシンボルである兎のように。滑らかな背中を、いつまでも撫でさせてくれるブロンズ製の犬のように。――動物も、そして人も、自分の役割を全うし生きている。気がつけば傍に在る彼らの温もりに満ちた、8つの物語。(Amazon「内容紹介」より)
【感想】
小川洋子さんによる、動物にまつわる8つの短篇集。みんなから愛される「世界の中心」にいるような動物ではなく、片隅で息を潜めているような小さな存在にスポットを当て、物語を紡ぎだしている。
地球は丸いのだから、物理的には「世界の片隅」なんか存在しないはず。なのに、僕らは心のどこかで、この世の中には「端っこ」があることを感じている。
ほとんどの人がそれをうまく言い表せないだろうけれど、小川洋子さんは、その「端っこ」に対する感度がとても鋭い人だと思う。
本書でも、名馬の海外遠征に付き添う「帯同馬」とか不登校の女の子に大事に飼われる「ブロンズ製の犬」とか、およそ小説の題材に適さないような動物たちを丁寧に描いている。
小川さんのように、誰も気づかないような片隅にも目を向けてくれる人がいるというのはとても救われる感じがする。
8篇を読み終えたときのほっと一息つく感じは、物語を通じて、小川さんの暖かい目線を感じるからかもしれない。
文庫版の江國香織さんの解説もすばらしいです。
【こんな人に】
・自分のことを「一人きり」だと感じてしまう人
・ほっと一息つきたい人