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現役編集者の書評ブログ

ビジネス書の編集をしています。読んだ本を不定期で紹介します。

【書評】『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』三上延

書評

面白さって伝わらない……

「本の面白さ」を伝えるのってほんとに難しい。

これまでにない、感動する、ラスト○ページの衝撃、今年一番の傑作……

どんなに言葉を尽くして説明しても、いやむしろ言葉を重ねれば重ねるほど、その本の一番愛おしい、伝えたい部分から遠ざかっていくような感覚を覚えてしまう。

 

 

だったらなんでこんなブログをやっているの、という話なのだが、それは「できないからやめちゃおう」という気持ちより、「なんとかわかってほしい、伝えたい」という想いの方が強いからだ。

 

 

Amazonでレビューを書く人も、Twitterで感想をつぶやく人も、ブログで発信する人も、自分の読書量や文章力を自慢したいというよりも、その本を読んだときの衝撃や感動をなんとかして伝えたい、より多くの人に知ってもらいたいという欲求に突き動かされているのではないかと思う。

 

 

最近、出版社が手書きで書かれた帯を巻いた本を出版したり、書店員が手書きPOPで販促をかけたりするようになったのも、読書好きの心を揺さぶるような生の感想を使った仕掛けをしたいと考えているからだろう。 

 

 

 実力のある編集者、書店員が作ったコピーやPOPというのは、その本を読んだときに抱く感覚を数行の短文で鋭く伝える。だから、読者は「思っていたのと全然違うじゃん!」ということがなく、安心してその本を買うことができる。

 

 

どうやったら、そんなに上手に的確に本のよさを伝えられるのか。僕が今抱えている「なんとかしてわかってほしい」の気持ちの先にその答えがあったらいいなと思いつつ、これからも「面白さ」を伝えるためにもがいていきたい。

 

 

今回紹介するのは、そんな「本の面白さ」を物語とともに伝えてくれる「ビブリアシリーズ」の最新作、そして完結作だ。

 

 

 

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ 』

書名:ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~

著者:三上延

出版社:KADOKAWA (2017/2/25)

ISBN:9784048926409

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2011年第1巻の出版から足かけ6年。ミリオンセラーとなった大人気シリーズ「ビブリア古書堂の事件手帖」の第7巻。今作がシリーズの完結作だ。

 

 

主人公の栞子はまだ20代ながらビブリア古書堂の店長として働く美しい女性。彼女は古書に関する豊富な知識と鋭い洞察眼を持ち、ワトソン的ポジションの店員大輔とともに、店に持ち込まれる様々な謎を解き明かしていく。

 今回は栞子の祖父が遺したシェイクスピアの希少本を巡る謎に、栞子と大輔の2人が挑む。古書の内容だけではなくて、「その本が誰から誰へと受け継がれたのか」という謎が栞子の家族関係と複雑に絡み合って、長編らしい深みのある展開となっていく。

 

 

 

「ビブリアシリーズ」は当初短篇だったため、「紹介されている本をほとんど読んだことない……」と自分の読書遍歴の浅さを見せつけられるようだったが、今作は長編ということで、「シェークスピア」だけを扱っているため、それほど心の余裕を失うことなく読み進めることができた。

 

 

紹介されている本の数は少なくなっているが、その分、「シェークスピア」についてはかなり深堀りされている。何気なく紹介されている情報が、謎解きの伏線となっていたりするので、簡単には読み飛ばさずにじっくり読んでみてほしい。

 

 

シリーズを通じて描かれてきた栞子と栞子の母親の関係も今作で一応の完結を見せる。今後、スピンオフが書かれるらしく、全てが大団円というわけではなく、若干余韻を残した形にはなっているが、長らくこのシリーズを追いかけてきた読者にとっては納得できるラストなのではないかと思う。

 

 

本にまつわるミステリーがこれほど多くの読者を獲得したことに、本に関わる仕事をする多くの人が勇気をもらったはずだ。

本ってこんなにもいろんな種類があって、それぞれに独自の物語がある。それをたくさんの人に伝えてくれた本シリーズが完結するのはさびしいが、これからもスピンオフや映画化などで、「本の魅力、面白さ」を伝え続けてほしいと思う。

 

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