現役編集者の書評ブログ

ビジネス書の編集をしています。読んだ本を不定期で紹介します。

【書評】『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』サンキュータツオ

「ことば」と「世界」

「ことば」が「思考」に影響を与えている、という考え方をご存じだろうか。

私たちは普段「ことば」を情報伝達の道具として見なしがちだが、実はその「ことば」によって、人間の根幹部ともいえる「思考」が影響を受けているというのである。

 

 

例えば、日本語は雨に関することばが他言語に比べて多いといわれる。

霧雨、小雨、五月雨、時雨……、篠突く雨なんておしゃれな表現もある。

僕ら日本人にはこれだけたくさんの雨に関することばがあるから、それだけ雨の様子をより細かく見分けられる。

逆に、ロシア語は雪に関することばが多いから、僕ら日本人が「雪」と一言で片づけてしまうものをより細分化して考えることができる。

 

 

つまり、多くの「ことば」を知っている人は、限定されない深くて広い「思考」を持つことができるということだ。

 

 

皆さんのなかにも、新しいことばを知って世界が広がるような感覚を覚えたことがある人もいるだろう。

そういったとき、僕らの認識できる世界というのは本当に広がっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』

書名:学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方

著者:サンキュータツオ

出版社: 角川学芸出版 (2013/3/23)

ISBN:9784046532749

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文学修士でもあり、芸人でもあるサンキュータツオによる国語辞典との「付き合い方」指南書。200冊以上の辞書(一体どこに置いてあるんだろう……)を持つ著者が、辞書の選び方、楽しみ方を熱くわかりやすく語ってくれる。

 

 

著者は昔から使われている歴史のあることばを中心に載せている「固め」の辞書と、現代語や流行の言葉を積極的に載せている「柔らかめ」の辞書の二冊を持つことを勧めている。

 そして辞書ごとにまったく違う語釈(語の説明)を楽しみながら、執筆者と編者の熱い思い、哲学を感じ取ってほしいと述べている。

 

 

僕も仕事柄よく辞書を引くが、使うのはもっぱら『広辞苑』で、辞書を使い分けるなんて考えたこともなかった。恥ずかしながら、辞書によって掲載語と語釈がこれほど違うというのも本書を読んで初めて知った。

 辞書の特色というのは、編者と執筆者の「ことば」に対する捉え方をそのまま反映させているといえるのかもしれない。

 

 

国語辞書は、僕らが使う「ことば」、そして「考え方」にも大きく影響を与えるものだ。そんな大事な辞書を、自分で選ばず、親や学校に選んでもらったものをそのまま使っていたりするのは、非常にもったいないことだと思う。

 

 

まだ、自分で辞書を選んだことのない人はこの本を読んで、自分に合った「二冊」を探してみてほしい。

 

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